神の立ち返り

Hebrew
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 「立ち返り」という言葉から連想される主体は、おそらくほぼすべて「人間」であると思います。人間以外のものが立ち返るというのは考えられません。ましてや神様が「立ち返る」というのは想像もできないと思います。これはその通りで、日本語の翻訳では必然的に人間が主体として想定されているからです。

 この「立ち返り」と翻訳されるヘブル語は「שׁוב(シューブ)」といいます。意味は「方向転換(turn)」です。人間に対して使われる時に、その意味は神への立ち返りや悔い改めること、つまり神に対して向きを変えること、となります。

 実はこの言葉が神に対して使われることがあります。例えば、詩篇6篇4節です。新改訳2017では「主よ 帰って来て(שׁוּבָ֣ה) 私のたましいを救い出してください」と訳されています。新共同訳では「主よ、立ち帰り わたしの魂を助け出してください。」と訳されています。この点、後者の訳の方が同じ言葉に一貫して同じ訳を当てていることがわかりやすいかと思います。

 神に対して不従順を繰り返す民に対して何度も「立ち返れ」と神は言われます。(例えば、エレミヤ3章14節「背信の子らよ、立ち返れ(שׁ֣וּבוּ)」)。神様の切実な思いが伝わってきます。それと同じように、詩人は切なる思いで主に「帰って来て」と訴えています(詩篇6篇4節)。この詩の背景としては、病や迫害が考えられます。このような窮地に陥った時、まるで神様に見捨てられたように感じることが誰しもあります。そのような時に、主よ帰って来てください、と祈るのは自然なことです。ですが、その時、身をもって知ることは、主ご自身も同じような切なる思いで背信の者に「立ち返れ」と訴えておられるということです。

 このように「שׁוב(シューブ)」という言葉が、人間だけではなく、神に対しても使われていることを知ることで、私たちの理解もより深まるのではないでしょうか。

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