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キリスト教葬儀について

牧師として働く中で、葬儀の司式をすることも大切な務めです。

この教会に遣わされて、何度も葬儀をする機会がありました。

葬儀では、初めてキリスト教に触れるという方もおられます。参加される方からよく耳にするのは、葬儀の中での「説教」に関するものが多いような気がします。

確かに、キリスト教の葬儀には「説教」があります。毎週日曜日に聞くような説教です。

それと言うのも、キリスト教にとって、葬儀は「礼拝」だからです。もちろん、故人の死を悼み、悲しみますが、故人の人生を初めから終わりまで、その御手の中で導いてくださった主を礼拝するのが、葬儀です。

ですので、「説教」が葬儀にはつきものです。そのベースには、御言葉があります。ですが、ほとんどの場合、故人の思い出や人柄に絡めた説教になることが多いように感じます。故人の生き様がまさに主なる神を証ししているのです。その意味において、故人の生きた人生のストーリーを語ることは、すなわち、神の栄光を表すことにも繋がります。私自身、参列者として葬儀に参加した中で、そのような素晴らしい葬儀説教を聞いてきました。故人を偲びつつ、神に目を向ける、心穏やかな時間となったことを思い出します。

しかし、クリスチャンではなかった場合、そのようなエピソード等がありません。このような時はどうしたらよいのでしょうか。そもそも、キリスト教式の葬儀は、クリスチャンのみが対象になるのでしょうか。中には、教会で行う葬儀は、クリスチャンに限定するというスタンスの教会もあります。もちろん、そのような姿勢も尊重されるべきだと思います。しかし、私は故人的には、信仰の有無に関わらず(遺族が希望されるならばという条件がつきますが)、誰でもキリスト教式で葬儀を行うことができると考えます。

おそらく、一番のネックになるのは、「救い」に関する事柄でしょう。信仰の有無が救いに関係するというのは、キリスト教会では広く受け入れられていると思います。ですので、何を語ればよいのか、語るべきことに躊躇を覚えるということもあると思います。

しかし、信仰の有無に関わらず、語ることができること、語るべきことがあります。それは、すべての命を造られた創造主についてです。

神によって造られたということは、信仰の有無に関係ありません。信仰があろうがなかろうが、神によって造られ、価値ある存在であるということは、すべての人に当てはまります。詩篇にはこのような一節があります。

8 主は恵みふかく、あわれみに満ち、

怒ることおそく、いつくしみ豊かです。

9 主はすべてのものに恵みがあり、

そのあわれみはすべてのみわざの上にあります。

詩篇145:9-10(口語訳聖書)

9節後半の「すべてのみわざ」と訳されている言葉には、”works and deeds of God“(HALOT)という意味もあり、邦訳聖書によっては「造られたすべてのもの」(ex.新改訳2017、新共同訳)となっています。まさに、この世界のあらゆるものは、神のみわざ、神によって造られたものだと言えます。

そして、それらすべての上に、神の恵みとあわれみが注がれているのです。

このことを考えた時に、人間には「救い」については知り得ませんが、少なくとも、造られたすべてのものの上に、神のあわれみと恵みが注がれることを祈り願うことは、許されていることであるように思われます。確かに、キリスト教会では、信仰は大きな事柄です。しかし、最終的な救いの判断は神ご自身であり、人間ではありません。どれだけ、上辺では信仰があると言っていても、中身が全く信仰から離れているということもあります。その意味において、人間には他人の信仰を測ることはできません。

しかし、すべてのいのちは神によって造られ、すべての人は造り主である神に愛されているということは、疑いようのない真実です。

それゆえに、命の造り主である神に目を向けること、創造主について語ることが、葬儀の説教ではできるのです。それは、大きな慰めを与えるものです。命は主の御手の中にあります。そして、残された者には、神の恵みとあわれみを祈り願うことができます。むしろ、恵みとあわれみに富んでおられる主に全てをゆだねることしかできないとも言えます。しかし、それが本当の慰めを与えるのではないかと思います。

そういうわけで、キリスト教の葬儀は誰にでもできることですし、その本質は究極的には、信仰の有無には影響されません。なぜなら、キリスト教葬儀は、礼拝であり、すべての命の造り主に目を向ける時であるからです。

少なくとも、残された者たちには、神の恵みとあわれみを求めて祈ることができます。そして、恵みとあわれみに富んでおられる神に委ねることができます。それは、残された者に平安と慰めを与えるように思います。

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