ウォルター・ウィンクの非暴力論の入門書である。「やられたらやり返す」(暴力)でも「黙って耐え忍ぶ」(無抵抗)でもない、イエスが提示した「第三の道」を、山上の説教を中心に読み解いていく。訳書は150頁ほどのコンパクトな書である。

本書の核心は、マタイ5章の「右の頬を向けなさい」「下着まで差し出す」「2マイル行く」といった一連の教えを、単なる無抵抗の勧めではなく、当時の社会的・法的文脈を踏まえた「能動的な非暴力抵抗」として読み直すところにある。たとえば「右の頬」は、当時の社会で目下の者への侮辱(手の甲での平手打ち)を意味しており、左の頬を差し出すことは「私を対等な人間として扱え」という尊厳の主張になる。ウィンクが「贖罪的暴力の神話」と呼ぶ、力による救済という現代の前提に対して、聖書の文脈から具体的に対案を示そうとする書である。

ただし、ウィンクが関わった1986年のフィリピン非暴力革命など、聖書解釈から現代の社会変革への適用へと踏み込む議論については、読者ごとに評価が分かれる領域である。訳者あとがきもこの点に触れている。

力による支配が前景化する時代にあって、聖書の非暴力理解が「弱さ」ではなく「能動的な強さ」であることを示す、実用的かつ神学的な書である。短く読めるが、再読に耐える内容を持っている。

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