今回は、クリスマスにおすすめの一冊、ティモシー・ケラー『Hidden Christmas: The Surprising Truth Behind the Birth of Christ』(隠されたクリスマス)のご紹介です。
クリスマスについて、数えきれない本が出版されていますが、この本は、単なる「心温まるクリスマスの物語」についての解説書ではありません。Kellerは、私たちが慣れ親しみすぎるあまりに見過ごしてしまっている、クリスマスの驚くべき、そして時には恐ろしくさえある真実を鮮やかに描き出しています。
2025年12月22日現在、ペーパー版は¥2,741ですが、Kindle版は¥190で、まさに驚くべき価格となっています。
本書の概要
ティム(1950-2023)は、21世紀のC.S.ルイスと称されることがあるように、キリスト教の本質について、的確に、わかりやすく語ることができる、まさに弁証家のようです。そして彼の著作は、すでに邦訳されているものも何冊かあります。
本書は全8章で構成されます。
- A Light has Dawned
- The Mothers of Jesus
- The Fathers of Jesus
- Where is the King?
- Mary’s Faith
- The Shepherd’s Faith
- A sword in the Soul
- The Doctrine of Christmas
3つの主要なテーマ
1. 闇の中の光(福音の必要性)
ティムは、クリスマスの物語が「暗闇」から始まることを強調します。現代社会は「人間は自力で良くなれる」と考えがちですが、聖書は「私たちは自分を救えないほど暗闇の中にいる」と告げます。そしてこれはある意味、受け入れ難い事実でもあります。それは例えるなら、友人から「ダイエット本」をプレゼントにもらうようなものです。友人は健康のことを考えて渡していたとしても、受け取る側は侮辱されたと思うでしょう。同じように、イエスという光を受け取るということは、私たちが「暗闇」にいることを認める必要があるのです。
クリスマスとは、私たちが内側から生み出せるものではなく、「外側から差し込んできた光」であるということ。この「救いの必要性」を認めるところから、真の喜びが始まります。
2. 「不完全な人々」への恵み(系図の衝撃)
マタイの福音書にあるイエスの系図には、当時の文化では考えられないような、いわば「訳ありの女性たち」(タマル、ラハブ、ルツ、バテシェバ)が登場します。 ティムはここから、神の恵みが道徳的に完璧な人ではなく、壊れた人生を送る人々や社会的に疎外された人々に注がれることを示します。マタイの福音書に記されている系図は、一見すると、読み飛ばしてしまいそうになるものですが、実は系図そのものが「福音(グッドニュース)」であることを教えてくれます。
3. 神のへりくだりと「剣」
多くの人は、飼い葉桶に眠る赤子のイエスを「可愛らしいシンボル」として見ます。しかし、ティムは、全能の神が弱さの中に飛び込んできた「受肉(incarnation)」の衝撃を強調しています。神が裁き主としてではなく、裁きを自ら引き受けるために来たこと。また、イエスを王として迎えることは、自分の人生の主導権を明け渡すという「剣」のような鋭い決断を迫るものであることを指摘します。
この本の魅力
おそらく、クリスマスと聞くと、それに対するイメージや反応は、真っ二つに割れるのではないでしょうか。クリスマスを楽しんでいる人もいれば、全く楽しめない、むしろ嫌いだという人もいます。それもそのはずで、昨今のクリスマスはあまりにも商業化し、またセンチメンタルな感情を煽ってくるものであり、自分にとってクリスマスは無関係だと思わせてしまうような残念な現実があります。
ですが、本書を通して、クリスマスはそのような、いわゆるセンチメンタルなイベントではないことがわかると思います。むしろ、そのような理解から解放され、クリスマスが本当に意味するところを知ることができます。
また、本書は短く、簡潔である点もおすすめです。英語を勉強中の方にも、興味深く、また勉強の一環として読むのにちょうどよいのではないでしょうか。
まとめ:誰にオススメ?
- クリスチャンの方: 毎年のクリスマスに「新しさ」と「驚き」を再発見したい方へ。
- キリスト教に関心のある方: キリスト教が教える「福音」の本質を知りたい方へ。
- 「世俗的なクリスマス」に虚しさを感じる方: イルミネーションやプレゼントの本当の意味や人生の希望を探し求めている方へ。
クリスマスのメッセージは、クリスマスの時期だけのものではありません。むしろ、聖書全体は、クリスマスのメッセージであるイエス・キリストの到来を語っているとも言えます。この機会に、読み始めてみてはいかがでしょうか。
