新年を迎えてしばらく経ちました。皆さんは、年頭に立てた計画や習慣を、今も続けられているでしょうか。

実を言うと、先日のブログにも簡単に書きましたが(新年の静かな始まりと、小さな習慣)、私は今年早々に体調を崩してしまい、改めて、「気合」や「根性」だけではどうにもならない現実を突きつけられたような気がします。そんな中で手に取ったのが、世界的なベストセラーとなっているジェームズ・クリアー著、牛原眞弓訳『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる一つの習慣(原題:ATOMIC HABITS)』(パンローリング、2019年)です。

この本は、単なる自己啓発や成功のためのテクニック集ではありません。私たちが「なぜ習慣化に失敗するのか」を脳科学や心理学、哲学等の視点から解き明かし、具体的で確実な解決策を提示してくれる一冊です。

1. 「最小習慣( Atomic Habits)」の驚くべき力

本書の核心は、原題にもある「アトミック(原子)」という言葉に集約されます。

最初のページをめくると、このような格言があります。

小さな変化が驚くべき成果をもたらす
Tiny Changes, Remarkable Results

ジェームズ・クリアー、牛原眞弓訳『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる一つの習慣』(パンローリング、2019年)

著者は、大きな目標を立てるよりも、1%の小さな改善を積み重ねることの重要性を説きます。1%の改善は、1日単位では目に見えません。しかし、それを1年続ければ、理論上は「37倍」もの成果となって現れます(P.25)。これが「習慣の複利」と呼ばれるものです。

この本を読みながら、これはクリスチャン生活にも、応用できるものだと思いました。たとえば、私たちは、つい「毎日○回/○分祈る」とか、「今年こそ聖書を1周通読する」といった大きな目標を立てては、挫折してしまいます(もちろん、全員ではありません!少なくとも、私はそのようなことが何度もありました)。しかし、著者曰く、そのような変化をもたらすものは(つまり人生を変えるのは)、「原子(atomic)」のように目に見えないほど小さな「最小習慣」なのです。

2. 習慣を変える「四つの法則」

本書では、習慣を定着させるための「四つの法則」が紹介されています。これをクリスチャン生活(例えば聖書通読)に当てはめると、非常に明快なチェックリストになります。

  • 第1の法則:はっきりさせる(きっかけ) 
    著者は「習慣を変えるための最大の課題のひとつは、自分の実際の行動を意識し続けるということ」だと言います(P.80)。そのためには、まず自分の習慣をリストアップすることから始めることを勧めます。そうすることで、どの習慣がプラスで、どの習慣がマイナスなのかが見えてきます。

    その上で、新しい習慣を始めるときに、既存の習慣の上に「積み上げ」るように、連動させることが重要だと言います。そうすることで、無理なく新しい習慣を始めることができます。

    例えば、すでに毎朝コーヒーを飲む習慣があれば、1. カップにコーヒーを注いだら60秒瞑想することを付け加えます。2. 60秒瞑想したら、その日のやること(to-do)リストを書き、3. その日のやることリストを書いたら、すぐ最初の作業に取り掛かる、といった具合です(P.93)。

    これは本書の中のほんの一例ですが、とにかく習慣を具体的に場所やものと結びつけて具体化することで実践しやすくなります。

    これを例えば、聖書通読に応用するとしたら、毎朝起きる(寝る)という習慣のなかに、聖書を枕元に置く、という習慣の積み上げができるかと思います。あるいは、朝食を食べる椅子の上においておくとか。この習慣を積み上げていくことで、新しい習慣を取り入れることができます。
  • 第2の法則:魅力的にする(欲求)
    やはり、新しい習慣を取り入れるにしても、それが苦痛であったら、なかなか始められないし、続かないものです。

    著者は「誘惑の抱き合わせで習慣を魅力的にする」ことを勧めています。「誘惑の抱き合わせは、自分がしたい行動と、しなければならない行動をセットにすることで効果を生じる。バーンの場合は、ネットフリックスを見ること(彼がしたいこと)と、サイクリングマシンをこぐこと(しなければならないこと)をセットにしたわけだ。」(P.129)。

    また、この「魅力」というのは、それぞれの生活している文化等によっても変わってきたり、決まってきたりします。たとえば、本書で挙げられる一例は、チェス一家で育つと、チェスをすることが魅力的に感じます。普通の人は、どうしてそこまでチェスに打ち込めるの?と思う(つまり、魅力的ではない)わけですが、その環境がそれを魅力的にするわけです。

    あるいは、習慣そのものを魅力的にするためには、認識を変えることも意味のあることです。た「運動といえば、エネルギーを消耗して疲れる困難な作業だと思う人が多い。でもスキルを向上し、身体を鍛える方法だと考えることも簡単にできる。自分に『朝、ランニングにいかなきゃ』と言いきかせるのではなく、『さあ、忍耐力をつけて足を速くする時間だ』と言おう。」(P.154)

    たとえば、聖書通読は「読まなきゃ」と思うと苦痛ですが、(些細なことでも)「どんな発見があるかな」と期待して読むこともできるはずです。さらには、魅力的なものと抱き合わせるなら、大好きなコーヒーを淹れることと聖書を読むことをセットにすることも一つの手でしょう。
  • 第3の法則:易しくする(反応)
    これこそ、本書の肝と言えるかもしれません。まさに、無理のない範囲で、できる「最小習慣(atomic habits)」です。

    そのためには「環境」も重要です。「大事なのは、できるだけ良い行動がしやすい環境を作ることだ。良い習慣を身につけるための闘いとは、要するに、良い習慣に伴う抵抗を減らし、悪い習慣に伴う抵抗を増やす方法を見つけることである。」(P.177)

    また、著者は「二分間ルール」というものを提唱しています(脚注によれば、デビット・アレン氏のアイディアを参考にしているようです)。「1分間の瞑想や、1ページの読書、一足の靴下をたたむことなら誰にでもできる。そしてすでに述べたように、これは強力な戦術だ。いったん正しいことを始めたら、とても続けやすくなるからだ。新しい習慣が試練のように感じられるようではいけない。あとに続く行動はたいへんかもしれないが、最初の二分間は易しいものであるべきだ。あなたに必要なのは、もっと生産的な道へと導いてくれる『入り口の習慣』である。(P.186)。

    このルールは、誰でもすぐに取り入れられるものです。たとえば、聖書を読むにしても、いきなり何章も読むことはハードルが高いものです。ですので、2分でできること、つまり、聖書を取り出して、聖書を開き、一節だけ読むこと。そこから始めることで、習慣を「最小」にするということです。

    ただし、「コツ」としては、その習慣が定着するまで、必ず「2分間」で止めるということです。(P.189)
  • 第4の法則:満足できるものにする(報酬) 
    習慣という行動の結果、「報酬」が発生することで、その習慣はより継続されるようになります。ですが、報酬には「即時報酬」と「遅延報酬」があります。残念ながら、多くの場合、悪い習慣は「即時報酬」をもたらすため、良い習慣によってもたらされる「遅延報酬」よりも魅力的なものとなりがちです。

    しかし、多くの人はそのことがわかっていると著者は指摘しています(P.212)。それでも、目の前の魅力(即時報酬)には目が眩んでしまいます。ではどうしたらよいのでしょうか。「解決方法は、状況をひっくり返すことである。回避したことがはっきり見えるようにすればいい。貯金口座を開いて、あなたが欲しいものの名前をつけよう。ひょっとしたら『革のジャケット』だろうか。買い物を我慢するたびに、同じ金額のお金を口座に入れていく。朝のカフェラテを我慢した?五ドル入れよう。ネットフリックスをひと月我慢した?十ドル入れよう。あなた自身のためのポイントサービスのようなものだ。革のジャケットに向けてお金が貯まっていくのを見るという即時報酬は、ただ我慢しているよりずっといい。何もしないことが、満足できるものになる。」(P.214)

    また、習慣を可視化すること(習慣トラッカー)の重要性についても著者は指摘しています。やはり、自分の取り組みが、それがどれだけ些細なものであったとしても、記録として残り、そして、それが目に見えて確認できるなら、モチベーションアップに繋がることは、よく理解できることだと思います。

    そして、大事なことは、習慣を途切れさせないことではなく、途切れたときに、すぐに戻すということです。「これは、勝者と敗者の性格の違いを表すものだ。誰でも成果が出なかったり、トレーニングができなかったり、仕事がうまくいかない日があったりする。でも成功する人は、失敗してもすぐに立ち直る。習慣が途切れても、早く再開できたら問題ない。」(P.224)

    ですので、聖書通読にしても、1日も途切れさせないぞというよりも、途切れたとしても、そこから立ち直ることの方が重要だと認識していることは、習慣を継続する上では必要なことだと言えそうです。そして、日々の記録(感想やチェックマーク)によって、習慣を可視化し、聖書を読むことで得られるみことばの養いを日々感じることで、その習慣は定着していくのではないでしょうか。

3. 習慣は諸刃の剣

本書の魅力は、ここでは書ききれませんので、実際に手に取ってみていただきたいと思いますが、個人的には「習慣は諸刃の剣だ」という言葉が刺さりました(P.28)。

良い習慣は、たとえそれがどれほど些細なものだとしても、人生を良い方向に変えていくことができます。しかし、その一方で、悪い習慣は、たとえそれがどれほど些細なものだとしても、人生を悪い方向に変えていくことができます。

これは一見、当たり前のようで、意外と意識されていないことかもしれません。そう考えますと、たかが習慣、されど習慣。習慣の重要性が身に染みてきます。

終わりに

今回は、習慣についてのベストセラーのご紹介でしたが、「信仰生活にテクニックを持ち込むのか」と思われる方もおられるかもしれません。しかし、本書で語られていることは、信仰生活において、有益であることは確かです。

このことは、クリスチャンとしての生き方にも通じるものです。たとえば、クリスチャンというのも、日々成長させられていく者ではありますが、それは自己の努力なしに、魔法のように変えられることではないからです。成長するためには、個々人の取り組み、日々の歩みが大切です。

ですが、それがいくら大切だからといって、強靭な意志を持っていないのもまた、人間です。だからこそ、まずは「仕組み」を整えること。そのようにして、より成長しやすくなっていくことは、大切なことではないでしょうか。

もちろん、それは聖書通読や祈りの習慣に限った話ではありません。これはそれぞれが聖書から学び、教えられていくものであるように思います。

「習慣が続かない」と意志の弱さを嘆くよりも、主の恵みを受け取りやすい「仕組み」を生活の中に作っていく。 毎日更新を目指すこのブログも、私にとっての「最小習慣」の一つです。

皆さんも、今日から「1%の小さな一歩」を、主と共に踏み出してみませんか。