皆さんは「Study Bible(スタディバイブル)」なるものをご存知でしょうか。一言で言ったら、聖書の本文に加えて、簡単な注解書が付記されたものです。聖書の解説なら、専門書や注解書にあたれば良いわけですが、スタディバイブルの最大のメリットは、どちらも一冊に収まっている点にあるように思います。
残念ながら日本語のスタディバイブルはほとんどありません。有名なところで言えば、共同訳聖書のものが出版されているくらいでしょうか。似たような性格のものとしては、「チェーン式聖書(新改訳)」も挙げられます。こちらも聖書の本文に加えて、注解や索引などが収録されています。ただ、出版は10年ほど前(2014年)になります。新改訳に関しては、『新改訳2017』版では出ておらず、第3版のものとなっています。

一般的に、聖書を読みながら、参考書も読むというのは、なかなかハードルが高いように思われます。特に初めて聖書を手に取り、学びたいと思う方にとっては尚更です。ただでさえ分厚い聖書を開くのにも一苦労な上に、もう一冊手に取る気にはならないですよね。かといって、聖書だけを読んでもさっぱりわからないこともしばしばです。そうなると、もはや負の循環となって、聖書からどんどん離れていってしまいます。
そんな時、スタディバイブルは非常に便利です。必然的に聖書本文だけのものよりは分厚くなりますが、それさえ手に取れば、とりあえずは解説付きで本文が読めるので、気持ちとしてはだいぶ楽になるのではないかと思います。そんなスタディバイブルの日本語版がたくさん出版されることを願って止みません。
実は海外では、Study Bibleは主流となっていると言っても過言ではないと思います。特に、聖書をもう少し詳しく勉強したい方にとってはうってつけです。私も実際、牧師や学者に限らず、活用している方々を何人も見ることがありました。
そのことは出版されているスタディバイブルの種類の多さによっても証明されているのではないかと思います。それは聖書翻訳の多さとも無関係ではありません。聖書の翻訳の数だけ、スタディバイブルがあります。また同じ翻訳でも、異なるスタディバイブルもあります。要は、神学的な立場の数だけあるということです。
よく知られているものとしては、ESV Study Bibleが挙げられます。

他にも下記のようなものもあります。




これはほんの一部です。「Study Bible」で検索すれば、たくさん出てきますので、ぜひ一度調べてみてください。Amazonなどではサンプルページも閲覧できます。
このようにスタディバイブルはたくさんの種類があるわけですが、これは裏を返せば、それぞれには特色があるということでもあります。つまり、聖書+注解書という形ですので、それぞれには特有の神学があるということです。
たしかにこれには一長一短があるとも言えるかもしれません。というのも、スタディバイブルで聖書を読むということは、聖書をシンプルに読むというよりも、解釈ありきで聖書を読んでしまうことになりかねないからです。しかし、聖書というのは、解釈なしで読むことはほぼ不可能であることは受け入れざるを得ない現実でもあります。なぜなら、誰であっても、何かしらの前提を持って聖書を読み、理解することになるからです。自分はフラットに聖書を読んでいると思っても、その時々の時代、それまでの経験、自分自身の思想など、自分を形成する種々の事柄による影響から逃れることは誰もできません。
ですので、そのようなことを念頭に置きつつ、スタディバイブルを用いるなら、非常に有益だと思います。つまり、様々な神学的な解釈が反映されているものとして読むということです。いろんな神学や解釈がある中で、スタディバイブルは初めに手に取る「注解書」としてはハードルがとても低いと言えます。いきなり聖書を勉強しようと思っても、どんな本を手に取ればいいのかわからないこともある中で、スタディバイブルが一冊あれば、聖書を学ぶ足掛かりにはなります。そして何よりも、手間がかからないことが大きいと思います。もちろん、重たいということはありますが、一冊手に取るだけで聖書を学び始められることは魅力的です。そして、もっと勉強したい箇所があれば、それぞれの専門書に手を伸ばせば良いわけです。コストパフォーマンスにも優れているのではないでしょうか。
しかし、堂々巡りとなってしまいますが、いかんせん日本語版のスタディバイブルがとても少ないというのが残念です。その理由は、はっきりしたことは分かりませんが、結局のところそもそもの需要が少ないからだと思われます。ただでさえキリスト教人口が少ないのに、そんな分厚いものを出版するのは、費用対効果が見合っていないのかもしれません。ですので、そこはもう日本のクリスチャンが増えることを期待するほかないのですが、ここは一つ視点を変えまして、英語のStudy Bibleを手に取ってみるのもよいのではないでしょうか。
英語をスラスラ読むということはなかなか難しいかもしれませんが、逆に聖書で英語を勉強するくらいの気持ちで読んでみるのもアリかもしれません。英訳聖書は、長い歴史がある分、非常に完成度の高い英語であると言われることがあります。つまり、変な言い回しがなく、練りに練られた文章だということです。
また、英訳のStudy Bibleは種類の多さもさることながら、デザインも非常に優れているように感じます。装丁がとても美しく、手に取るだけで、聖書を読みたいという気持ちも湧き上がってくるのではないでしょうか。これはあくまでプラスαの要素ですが、しかし、手にとって気持ちが高まるというのは大切な要素であるようにも思います。
ということで、Study Bibleについて簡単にご紹介しましたが、聖書を読み始めて、次のステップに進みたいという方は、ぜひご検討してみてください。