「組織神学」とは

組織神学とは Theology
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「組織神学(Systematic Theology)」は、キリスト教の信仰内容(教義、教理)を、聖書に基づいて、論理的かつ体系的に整理し、現代の文脈においてその意味と適用を探求する学問分野です。

「組織」という言葉は、教会や団体の組織運営のことではなく、「キリスト教の教え全体を『体系的に組織化する』」という意味合いで使われます。

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なぜ「組織」するのか?

キリスト教の信仰は、聖書に書かれています。しかし、聖書は様々な時代、様々な著者によって書かれた多様な書物の集まりであり、単に読むだけでは、神とは何か、人間とは何か、救いとは何か、といった問いに対する一貫した理解を得るのは難しい場合があります。

そこで、組織神学は以下のような目的で、聖書の教えを体系的に整理しようとします。

  • 一貫性の理解: 聖書全体を通して、神の性質、人類の罪、イエス・キリストによる救い、教会の役割、終末の希望といった、キリスト教信仰の主要なテーマがどのように関連し合っているのかを明らかにします。
  • 誤解の防止: 断片的な知識や個人的な感情に流されることなく、聖書全体に基づいたバランスの取れた理解を深めることで、異端的な教えや誤った解釈に陥るのを防ぎます。
  • 現代への適用: 昔の教えをただ繰り返すだけでなく、現代社会の様々な問題(科学、倫理、他の宗教との対話など)に対して、キリスト教信仰がどのように応答できるのかを考えます。

組織神学で扱う主なテーマ

組織神学の教科書や講義では、一般的に以下のようなテーマが順序立てて議論されます。

  1. 序論(Prolegomena):
    • 神学とは何か、その目的や方法論について説明します。
    • 啓示(神がご自身を人間に示すこと)や聖書(神の言葉としての聖書の位置づけ、権威、解釈の方法など)について議論します。
  2. 神論(Theology Proper / Doctrine of God):
    • 神の存在と性質(全知、全能、遍在、聖、義、愛など)について探求します。
    • 三位一体(父なる神、子なるイエス・キリスト、聖霊なる神が唯一の神であるという教え)について詳しく考察します。
  3. 創造論(Doctrine of Creation):
    • 神による天地創造の意味、人間が創造された目的、宇宙の秩序などについて考えます。
    • 科学と信仰の関係(創造論と進化論など)も議論の対象となります。
  4. 人間論(Anthropology):
    • 人間の本質、神のかたちに創造されたことの意味、自由意志、そして罪(原罪、罪の本質と影響)について考察します。
  5. キリスト論(Christology):
    • イエス・キリストの人格(神性と人性)と業績(誕生、生涯、十字架、復活、昇天)について深く学びます。
    • キリストがなぜ救い主であるのか、その救いの意味が問われます。
  6. 聖霊論(Pneumatology):
    • 聖霊の人格と働き(信徒への内住、新生、聖化、賜物など)について考察します。
  7. 救済論(Soteriology):
    • 人間がどのようにして救われるのか(信仰義認、悔い改め、回心、聖化、栄化など)について議論します。
    • 予定論や自由意志との関係もこの分野で扱われます。
  8. 教会論(Ecclesiology):
    • 教会の本質(キリストの体)、その使命、組織、礼拝、聖礼典(洗礼、聖餐)などについて考察します。
  9. 終末論(Eschatology):
    • 個人および世界の最終的な運命(死、復活、再臨、最後の審判、天国、地獄、新しい天と新しい地など)について考えます。ここが、先ほどご質問のあった神義論の終末論的視点と密接に関連します。

まとめ

組織神学は、バラバラに書かれた聖書の記述から、キリスト教信仰の全体像を系統立てて、論理的に、そして現在の文脈に照らして理解しようとする学問です。テーマごとに学ぶ上では、有益な手段だと言えます。

このように組織神学は、体系的に整っているという点において、とても「わかりやすい」のですが、それがかえって仇になってしまうこともあるように思われます。つまり、それぞれのテーマを個別に抜き出して理解することなど、そもそもできない、というか想定されていないのではないか、という懸念があるということです。

聖書の教えが語り継がれてきた歴史的背景には、イスラエルの民のストーリーがあります。それらを抜きにして、ただ知識の集積として組織神学を学ぶなら、それは無味乾燥した知識になってしまいかねません。ですので、そのような懸念点も抑えつつ、学ぶことができたらよいのではないかと思います。

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