前回のLogos活用法:導入編では、Logos Bible Softwareがどのようなソフトウェアか、その全体像をご紹介しました。今回からは、具体的な機能を一つずつ取り上げていきたいと思います。

最初にお伝えしたいのは「ファクトブック(Factbook)」という機能です。Logosには多くの研究ツールが備わっていますが、便利さを手っ取り早く実感していただくには、まずこの機能から触れるのが一番だと思います。

なお、ファクトブックについては以前に簡単な紹介記事も書いていますので、まず概要だけ知りたい方はそちらをお読みいただいてからこの記事に戻っていただいても結構です。本記事では、より踏み込んだ使い方をお伝えしたいと思います。

聖書 “百科事典”のような機能

ファクトブックを一言で表すなら、「自分のライブラリ全体から関連情報を集めてきてくれる、生きた百科事典」とでも言えるでしょうか。

たとえば、マタイによる福音書を読んでいて、「the son of David(ダビデの子)」という呼称が気になったとします。この語をファクトブックで検索すれば、所有している聖書事典の中から「ダビデの子」というメシア的称号に関する項目、この呼称が登場する主要な聖書箇所、関連するメディア(画像や図解)、関連するジャーナルや論文、そして他の参考書からの言及までもが一画面に集約されます。

紙の事典であれば、一つの項目について調べるために何冊もの書物を行き来する必要があります。ファクトブックは、その行き来をソフトウェアが代行してくれる、と理解していただければ近いかもしれません。

3つのアクセス方法

ファクトブックには主に三つの入り口があります。

1つ目は、画面上部の検索ボックスに調べたい語を直接入力する方法です。例えば、「Pharisees」と打ち込めば、パリサイ派に関する記事がすぐに開きます。

これは拡大してみていただけたらわかると思いますが、左側がファクトブック、右側上部が聖書テキスト、右側下部が辞書の類です。これがワンクリックで出てきます。

2つ目は、ツールメニューからファクトブックを開く方法です。先に何を調べるかが頭の中にあるときに自然な動線です。

3つ目は、聖書本文の中の単語を右クリックする方法です。聖書を読みながら「この用語について少し詳しく知りたい」と思った瞬間に、関連書籍に当たることができます。この自然さが、Logosの設計の巧みさを感じさせるところです。

加えて、ビジュアルフィルター機能を有効にすると、聖書本文中のファクトブック対応語に下線が表示され、カーソルを合わせるだけで、簡単な意味など確認できます。また、そこからハイパーリンクのように直接記事へ移動もできます。

何が調べられるのか

ファクトブックで検索できる対象は、驚くほど多岐にわたります。

聖書の人物・地名・事物。ここまでは想像のつくところでしょう。それに加えて、神学的な概念(義認、贖罪、神の国など)、ギリシア語・ヘブル語の原語そのもの、聖書の各書、特定の聖句やペリコーペ、聖書中の出来事、文化的な習慣、教会史上の人物や出来事までもが、検索の範囲内です。

つまり、ファクトブックは、「聖書の中の何か」だけでなく、「聖書を取り巻く神学的・歴史的世界全体」への入り口として設計されているのです。

構造

検索結果のページは項目によって少しずつ違いますが、概ね次のような区画から構成されています。

簡潔な定義、主要な解説記事、関連する聖句のリスト、所有する聖書事典からの該当項目、関連するジャーナル論文、地図や画像などのメディア、そして関連する別のファクトブック記事への「Dig Deeper」セクション。すでに過去に説教原稿を作成している方であれば、そのテーマで書いた原稿の記録までも引き出されてきます。

特に便利だと感じるのは、ファクトブック記事から他のガイド機能(パッセージガイドや原語研究ガイドなど)へ直接ジャンプできる点です。ファクトブックで全体像をつかみ、必要に応じてより詳細な研究へと進むといった自然な流れが組み込まれています。

ただ、注意事項としては、ここで調べることができる内容は、自身が持っている書籍データに限られるということです。それでも、辞典系を何冊か持っているだけでも、この便利さは十分に味わえると思います。

また、おすすめBooksが出てくるのは、新たな出会いもあり、地味に助かる機能かもしれません。ついついポチッとしてしまうことも…

邦訳聖書を読むための工夫

ここで、日本語環境で聖書を読む者にとって避けて通れない話題に触れておきたいと思います。

現時点でLogosには邦訳聖書が含まれておらず、ファクトブックも基本的には英訳聖書を起点として使うように設計されています。普段から邦訳聖書を読んでいる私たちにとっては、「聖書を読みながらその場で気になる語を調べる」というスムーズな動線の恩恵を、そのままの形では受けにくいのが正直なところです。

ですが、工夫の余地はあります。邦訳聖書で気になる箇所を見つけたら、その箇所を英訳聖書で確認し、英単語をファクトブックに入力することで、少し手間は増えますが、同じように機能を活用できます。これだけでも、十分に研究の助けになります。

そしてこれは、少し前向きに捉えれば、英訳聖書に親しむ良い機会でもあります。ファクトブックを介して英訳と邦訳とを行き来することで、日頃読み慣れた箇所が、別の言語の翻訳(解釈)を通して新しい光を帯びることもあります。一つの不便さが、聖書を立体的に読む訓練に転じる可能性を持っていると言えるのではないでしょうか。

ぼくどくメモ

便利なツールが瞬時に見せてくれる「全体像」は、説教の準備において非常に頼もしい存在です。その一方で、広大な知識の海を前にして、自分の無知さに圧倒されそうになる瞬間もあります。 そんな時、ふと心に浮かぶ問いがあります。私たちが御言葉に向かうとき、本当に求めているのは「すべての知識を網羅すること」なのでしょうか。それとも、一つの御言葉の前に深く沈潜し、祈りを通して静かに聞き続けることなのでしょうか。 きっと、どちらも欠かすことのできない両輪なのだと思います。だからこそ、ありとあらゆる情報が指先一つで手に入る時代にあって、効率よく「情報を集める時間」と、立ち止まって「御言葉の前に静まる時間」を、より意識的に分けて歩んでいきたいと感じています。