アメリカ政治の背景にある「福音派」の影響を、19世紀以降の歴史的変遷をたどりながら分析した書である。著者は福音派と原理主義の関係を丁寧に追い、両者がどのように接近・重複していったのかを描き出していく。

本書の立場は”福音派”に対して批判的である。ただしその批判は、神学的な論争としてではなく、福音派が現実の政治の場でもたらしてきた帰結に向けられている。特に強調されるのは、終末論的な世界観に立つ福音派が、対立する相手を悪魔的存在とみなしがちであり、結果として対話を前提とする政治的リベラリズムの基盤を損なってきた、という構造的な指摘である。同時に著者は、福音派にも左派と右派の幅があることを認めており、一枚岩のステレオタイプを慎重に避けている。

ただし、本書が描くのはあくまでアメリカの福音派の歩みであり、日本の福音派をそのまま重ねて読むことはできない。両者は歴史的・社会的位置がまったく異なる。日本の読者にとっては、本書の診断を自国の文脈にどう翻訳しうるか、あるいは翻訳すべきでないかという、もう一段階作業が必要となる。

2016年以降、日本でも「福音派」という言葉が政治と結びつけられて流通するようになったが、その含意を曖昧なまま受け取らないために、まず参照すべき一冊である。